8月になって1週間たちました。A田です。
現在開催中のツール・ド・ポローニュ第3ステージで、ロット・ソウダルのビョルグ・ランブレヒトが、レース中の落車で亡くなりました。私は中継はまだ見ていなくて、twitterやニュースで知りました。昨日の第4ステージでは順位は争わず、ランブレヒトを追悼するニュートラル走行となりました。
ランブレヒトはベルギー出身の22歳。昨年のU23の世界選手権で2位、今年はアムステルゴールドレースで6位、フレッシュワロンヌで4位、ドーフィネで総合12位でヤングライダー賞を獲得。将来を嘱望される選手でした。
本当に悲しい出来事で、ニュースを読んでいると涙が出ます…ここに哀悼の意を表します。
ちなみに、ツール・ド・ポローニュはDAZNで配信されています。
そして、ツール・ド・フランスのレポートを完成させようと思います。2019年アルプス決戦の衝撃、からの美しい夕日のシャンゼリゼゴールまで。どうぞ!
前回の記事はこちら。結果一覧もまとめています「【ツール・ド・フランス2019】3週目St16~18―クイーンステージを制したキンタナの意地」
第19ステージ:勝者なしで、ベルナル総合首位へ
ピュア・クライマーではないジュリアン・アラフィリップが、マイヨ・ジョーヌを着用したまま突入したアルプス3連戦。第18ステージでは、アラフィリップが総合1位キープ。
この日第19ステージ、めったにツールに登場しないというイズラン峠とヨーロッパ最高の標高道路(標高2,770m)を通過する、126.5kmのショートコースでした。
ティボー・ピノ無念のリタイヤ
アラフィリップとはまた別に、フランスの期待を背負っていたクライマー、ティボー・ピノ。前半の遅れを取り戻し、総合5位、1分50秒差に詰めていました。アラフィリップも「マイヨ・ジョーヌを譲るならピノがいい」という発言もしていたそうです。
しかし。
実は、2日前に落車でハンドルバーに脚をぶつけ、痛めていたそうです。それが悪化。「今年こそ」と満を持して挑み、いい走りを維持していただけに、どれだけ悔しかったか…
しかし、これがステージレースの常でもあります。
ティボー・ピノのこのツールまでの足取りの記事「2019年ツール・ド・フランスに帰ってきたティボー・ピノの「修行」とは?」
2週目ピレネーでのピノの勝利もどうぞ「【ツール・ド・フランス2019】2週目St⑪~⑮―アラフィリップ&ティボー・ピノ勝利、大統領と握手」
イズラン峠のアタック合戦。その結末は…
イズラン峠の上り。先行するのはニバリ、バルギル、ウラン、サイモン・イェーツ。そして後方のマイヨ・ジョーヌ集団では、ついにアタック合戦が始まりました。
トーマスのゆさぶりに喰らいつくアラフィリップ。しかし、その後のクライスヴァイクのアタックにはついて行けず、ついに遅れます。
そんななか、アラフィリップをマークしていたベルナルが動きました。少し前にいたトーマスのグループをさくっとかわし、先頭集団もさくっとかわし、イズラン峠頂上をひとりトップ通過。
しかし、下りの速いアラフィリップ。タイム差を詰めるべく追います。一方、先頭ではサイモンが下りで挽回し、ベルナルに迫る。ステージを狙うニバリ、ウラン。クライスヴァイクもトーマスも最後のティーニュの上りの決戦に備えている…
「来た来た来た~」と手に汗握りましたね。
しかし。
ゲリラ豪雪(雹)により、レース中止
全員が下りで加速している最中に、「レースの中止」が告げられました。
長い下り坂の先が、こんなことになっていたから。
本物↓
運営車やチームカー、メディア関係者が通過した後で、一帯が激しい雹に見舞われ、こんな有様に。土石流も発生し、非常に危険な状況でした。運営はさすがのナイス判断でした。
ただ、ラジオ・ツールを通して中止を告げられた後も、選手たちはしばらく止まりませんでした。
アラフィリップは腕を振りあげ、サイモンは拳を振り、ウランとニバリは何か言い争い(数年前のジロで『レース中断』の連絡でウランがすぐに止まったせいでタイムを落としたことがあったらしい)。
そして私は画面の前で頭を抱えました。omgなんてことだ~。
今年のツールは、かなり天候に恵まれていたと思います。それが、ここ大一番で。ツールに棲む「魔物」の所業だとしても…
この日のイズラン峠は「ツールにめったに登場しない『稀有な宝石』」だったのです。そして、この日上ることができなかったティーニュは、ティボー・ピノが「目をつむっても上れる」という峠だったのです。魔物…
こちらの記事にイズランやティーニュのことを書いています「ツール・ド・フランス2019予習―放送予定とコース、公式キャッチフレーズ添え」
ベルナル、マイヨ・ジョーヌ獲得!
総合タイムはイズラン峠の頂上地点のものが採用され、ベルナルのマイヨ・ジョーヌが確定しました。ポイントもその通過順位で加算されましたが、ステージ優勝者は「なし」という記録になりました。
もちろん、現場はてんやわんやだったそうです。放送枠内では、インタビューも表彰式も見られませんでした。
「正直言って何が起こっているのか理解できなかった。無線を通してレースが終了したと告げられた時は『いや、もっと走り続けたい』と思ったよ。主催者に英語で説明されたけど状況をうまく飲み込めず、止まって監督にマイヨジョーヌが確定したと言われてようやく安心した」
「夢が叶った。信じられない。明日のステージを全開で走って、パリのフィニッシュラインを越えたところでようやく現実として受け入れられると思う。厳しいステージがあと一つ残っている。力を出し尽くしたい。ツール史上初のコロンビア人総合優勝になるなんて夢のようだ」
cyclowired.jp「 積雹と土砂崩れにより急遽ステージ短縮 ベルナルがマイヨジョーヌを獲得 」
ベルナルがステージ優勝を飾って、マイヨ・ジョーヌを着るところを見たかった! でも、おめでとうベルナル!!
ベルナルについての記事はこちら「ツール・ド・スイス予習―配信予定、コース、注目選手(ベルナルとアル多め)」「ツール・ド・スイス閉幕:後編-若者の勝利が続出!総合優勝は22歳のベルナル」
この日の衝撃(もしくは消化不良)で、今年の私のツール・ド・フランス観戦エネルギーは燃え尽きてしまい、白い灰になってしまいました。
第20ステージ:ニバリ執念の勝利!
第20ステージは、悪天候で地滑りの危険もあるため、前半にあった山をふたつ削って59.5kmに短縮されました。上りは、今大会「最長」のヴァル・トランスひとつ。
19ステージに続いて、がっかりしましたよね。仕方がないことですが… でも「3週目の終わりに、簡単なことなど何ひとつない byティエリー・グヴヌー(レースディレクター)」です。
そして。
バーレーン・メリダのヴィンチェンツォ・ニバリが勝ちました! 1週目に遅れてから、ステージ優勝を目指して果敢に攻めていました。
「残り数百メートルが永遠に感じた。だからフィニッシュラインを切ったときは開放感に包まれたよ。麓の時点で十分なタイム差はあったけど、勝つためにフィニッシュまで距離を残してアタックしたんだ。昨年からずっと勝てていなかったので、これはリベンジを果たした気分だ」
cyclowired.jp「 59kmのアルプス最終決戦でニバリが逃げ切り勝利 ベルナルが総合優勝に王手 」
ニバリ主役の記事はこちら「ミラノ~サンレモ2019―DAZN配信予定 & 2018ハイライト:ニバリの勝利は必見!」
マイヨ・ジョーヌは変わらずエガン・ベルナル! これで総合優勝がほぼ決まりました。
総合2位につけたゲラント・トーマスに背中を押されながらゴールしました。これでイネオスはツール・ド・フランス総合5連勝です!
第21ステージ:シャンゼリゼを制したポケットロケット、3勝目!
シャンゼリゼの夜間ステージ、美しかったですね~。スタートは18時過ぎ。この時間帯の最終ステージは、2013年の100回記念大会以来だそうです。ルーブル美術館のピラミッドをかすめていくプロトンには感動しました。西日の差す凱旋門、シャンゼリゼも。
そしてJ SPORTS解説のフローラン・ダバディさんとともに見る最終ステージが、私は大好きです。生粋のパリジャン、知識人(そしてアッパークラス)ですね。
セルジオルイス・エナオとリゴベルト・ウランは同い年なんですね。その後数年をおいてキンタナ。そして22歳のベルナル。ジーンとする4ショットでした。
私はパリは学生時代に旅行で2度ほど訪れました。それでパリはもういいや的に思っていたのですが、やはり、いつかはツール・ド・フランスを現地で観たいと思いました。
最後のスプリントを制したのは、カレブ・ユアン! 初出場で3勝! シャンゼリゼ勝利! 強い!
「とても混沌としたスプリントだった。番手を下げていたので、少しずつポジションを上げながら右側に隙間を見つけてスプリント。幸い全員を差し切るスピードが自分にはあったんだ」
「信じられない。シャンゼリゼを走るのは現実的とは思えない感覚。ツール前半は低迷して勝てないんじゃないかとも思った。でも後半にかけて信じられないような成功をつかむことができた。8年前にシャンゼリゼを初めて訪れた時、いつの日かここで勝ちたいと誓ったんだ。その夢が初出場のツールで叶うなんて」
cyclowired.jp「 ユアンがシャンゼリゼでハットトリック達成 ベルナルが第106代ツール覇者に」
そして、総合優勝を決めたベルナル。
「言葉が出てこない。ツールで勝ったのに、まだ信じることができない。状況を理解するのに少なくとも数日はかかると思う。これは家族の勝利であり、彼らと抱き合いたい。この幸せな気持ちをどうやって表現したらいいのかわからない」
同上
各選手のコメント記事にはいつも感動します:cyclowired.jp「ベルナル「コロンビアはマイヨジョーヌにふさわしい」ユアン「ツール後半が信じられない」」
最後に表彰式の代わりに。公式の総集編を貼らせてください。
総合2位、ゲラント・トーマス。3位、スティーヴン(シュテーフェン)・クライスヴァイク。ポイント賞ペテル・サガン、山岳賞ロマン・バルデ、新人賞エガン・ベルナル。チーム賞モビスター。
そしてすべての完走選手、さらには出場選手に拍手を送りたいと思います。