ようやく週末が来ました。ツールドフランス 2020の第1週目、ラストの土日はピレネー二連戦ですね。A田です。
冷房が効いた部屋で、残業もなく自宅勤務している私が言うのもなんなんですが、選手たちみんな疲労困憊でしょうね。
第5ステージの翌朝、ニコラス・ロッシュが「コースが厳しくてみんな疲れてる。逃げる力が残っていない」という主旨の発言をしてたということです。(「逃げの機会を奪っている」ニコラス・ロッシュがツールのコースに関し主催者を批判 cyclowired.jp)
選手もスタッフも疲弊した結果か、前代未聞の珍事も起こりました。そんな第1週の半分を振り返ってみたいと思います。
※その後時間が進んで書き終わる頃には1週目が終わってしまいましたが、1週目の金曜日に書いた記事だと思ってください。
ツールドフランス第1〜5ステージの結果一覧
9ステージまで書き込んでしまいました
日程 | Stg | コース | ステージ勝利 | 総合順位 |
8/29(土) | 1 | 平坦 156km ニース | アレクサンダー・クリストフ(UAEチーム・エミレーツ) | 順位無効 |
8/30(日) | 2 | 上級山岳186km ニース | ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ) | 1.アラフィリップ 2.アダム・イェーツ +0:00:04 3.ヒルシ +0:00:07 |
8/31(月) | 3 | 平坦198km ニース~シストロン | カレブ・ユアン(ロット・スーダル) | 1.アラフィリップ 2.アダム・イェーツ 3.ヒルシ |
9/1(火) | 4 | 中級山岳160.5km シストロン~オルシエール・メルレット | プリモシュ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ) | 1.アラフィリップ 2.アダム・イェーツ+0:00:04 3.ログリッチ+0:00:07 4.ポガチャル+0:00:11 |
9/2(水) | 5 | 平坦183km ギャップ~プリヴァ | ワウト・ファンアールト(ユンボ・ヴィズマ) | 1.アダム・イェーツ 2.ログリッチ+0:00:03 3.ポガチャル+0:00:07 4.ギョーム・マルタン+0:00:09 5.ベルナル+0:00:13 |
9/3(木) | 6 | 中級山岳 191km ル・テイユ~モン・テグアル | アレクセイ・ルツェンコ(アスタナ) | 同上 |
9/4(金) | 7 | 平坦 168km ミヨー~ラヴォール | ワウト・ファンアールト(ユンボ・ヴィズマ) | 1.アダム・イェーツ 2.ログリッチ+0:00:03 3.ギョーム・マルタン+0:00:09 4.ベルナル+0:00:13 |
9/5(土) | 8 | 上級山岳 141km カゼール・シュル・ガロンヌ~ルーダンヴィエル | ナンズ・ピーターズ(AG2R) | 1.アダム・イェーツ 2.ログリッチ+0:00:03 3.ギョーム・マルタン+0:00:09 4.バルデ +0:00:11 5.ベルナル+0:00:13 キンタナ、ロペス、ウラン 9.ポガチャル +0:00:48 |
9/6(日) | 9 | 上級山岳 153km ポー~ラランス | タデイ・ポガチャル(UAE) | 1.ログリッチ 2.ベルナル +0:00:20 3.ギョーム・マルタン+0:00:28 4.バルデ +0:00:30 5.キンタナ、ウラン+0:00:32 キンタ 7.ポガチャ+0:00:44 |
第1ステージ:悪天候のニースで悪夢の大量落車
新型コロナウイルス流行によるレース開催停止期間を経て、最初にして最大のグランツール、ツールドフランス。「やっとここまで来たんだ…」という感慨を、誰もが持っていたと思います。
笑顔で全員走り終えるところを見たかった…。
雨で路面がスケートリンクのように滑る状態になってしまい、次々に落車が起こりました。そして選手たち自身で“自主ニュートラル”を宣言する事態に。「スローダウンして」のゼスチャーをするトニー・マルティンが印象的ですね。
こちらの記事に主な怪我人リストが載っています。ジルベール…
濡れた路面に相次いだ落車 ジルベールは膝蓋骨骨折、バルスは大腿骨骨折 cyclowired.jp
そんななかいぶし銀のスプリントでマイヨ・ジョーヌをもぎ取ったのが、アレクサンダー・クリストフ。やたら30代に肩入れしてしまう私には、嬉しい結果となりました。
クリストフが春のクラシック勝ったときの記事
第2ステージ:2日目にしてアラフィリップのマイヨ・ジョーヌが実現
夢か…? と思いました。(実際むにゃむにゃしながら視聴していたので…)
「今年はまだ1勝もできていなかったけど、苦しい時も真面目にトレーニングをこなしてきた。今日は厳しい展開に持ち込んで、人数が絞られた状態からアタック。失うことは何もなかった。出し切って崩れてしまうことを恐れたものの、アダム・イェーツは協力してくれたし、タイム差をもったままフラムルージュまで走りたかった。プレッシャーの中での勝利は格別。忘れていた勝利の感覚を味わっている。そしてマイヨジョーヌは素晴らしいボーナスだ」
大会2日目の本格山岳ステージでアラフィリップが亡き父に捧げる勝利&マイヨジョーヌ獲得 cyclowired.jp
アラフィリップの強さについては脚とか色々あると思いますが、「思いきりが良い」という評がぴったりくるのではないでしょうか。
昨年は春先に勝ちまくったアラフィリップ。フランスのロックダウン、6月にお父さんを亡くし、長く苦しいトンネルを抜けたような、今年の初勝利です。いや本当、すごいよ。スターだよ。
昨年の春先に勝ちまくったアラフィリップの記事
第3ステージ:前評判どおり、愛称どおりのポケットロケット
「やっと訪れた平穏なスプリントステージ」とのこと。途中、結構雨は降っていましたが…。
「メンバーは6人になってしまったけど、離脱した2人の分を補うように残されたメンバー全員が110%の力を発揮して勝利した」
ようやく訪れた平穏な平坦ステージ 向かい風スプリントでユアンがベネットを下す cyclowired.jp
ユアンのロット・スーダルは、第1ステージでジルベールとデゲンコルプの2人がリタイヤして6人。スプリンターのデゲンコルプはユアンの有力なアシストになるはずでした。しかし、そんなことものともしない、忍者のようなスプリントで勝利をもぎ取りました。
昨ツールでは初出場にして4勝をあげたカレブ・ユアン。今年ももっと勝つでしょ…。
昨年のジロの記事。この後ツールで4勝…!
第4ステージ:総合勢によるスプリントを制したログリッチ
開幕前から言われていた「1週目から山」。アルプスの1級山岳オルシエール・メルレットの山頂ゴール。冒頭に紹介したロッシュの「コースが厳しすぎる」代表格のステージ。
総合有力勢によるスプリントを制したのは、プリモシュ・ログリッチ! 強い。このままトラブルがなければ総合優勝までいくだろうな…と思わせられます。強制的に思わせられます。
(ログリッチを応援してないわけじゃなけど、応援しなくても勝つ気がするから…)
しかもその隣でポガチャルが2位でゴールしてるし。スロベニアコンビ、強い。
というわけで昨年のブエルタのスロベニア・デユオの記事
第5ステージ:まさかの逃げなし、まさかのファンアールト、まさかのマイヨ・ジョーヌ交代劇
まさかまさかのそのまさかですよ。
この日のJ Sportsのゲストは聖飢魔IIのルーク篁さんと浅田監督、実況はサッシャ。まさかのスタートからゴールまでアタックなし、逃げなしのステージ。ルークさんが「ルーク砲出るか(横風職人ルーク・ロウ)」と予想してるのに風もさほど吹かない。
それでも、勝者予想で浅田監督があげたワウト・ファンアールトがゴールしたときは、まさかまさかでした。
昨年のツールの第10ステージで初出場初勝利をあげて、その後TTの落車で大怪我。今年初旬に復帰し、8月に仕切り直したクラシック一発目、ストラーデ・ビアンケ勝利。と思ったら、ミラノサンレモでモニュメント勝ったファンアールト。
前日の山ではアシストとしてぐいぐい引いているのにどういうこと。
ストラーデ・ビアンケは2年連続3位の後の優勝。でも昨年から異次元の走りだったのかな
ゴール前20km以内の補給で20秒のペナルティ、アラフィリップ
そして、この日はゴールまでしか見なかったのですが、翌日みたらアラフィリップがマイヨ・ジョーヌを失っているではないですか!! やっぱり表彰台まで見なきゃあかん…と思わされた事件でもありました。
アラフィリップは20秒タイムを失い、マイヨジョーヌは2位につけていたアダム・イェーツへ。
アダム・イェーツのコメント
思っていたジャージの手に入れ方ではない。ジュリアン(アラフィリップ)に何が起こったのかまだ分からないが、補給を取るのが遅れたからペナルティを受けたとかだと聞いた。このような状況でイエロージャージを着たい選手はいないと思う。ペナルティよりも自分の脚で着る方がいい。バスでシャワーを浴びた後まで知らなかったんだ。
彼には申し訳ないと思っている。ジャージは明日手に入れたいと思っていたので、同じ作戦で挑み、ステージを勝ちたいと思っている。
ファンアールト「チャンスを与えてくれたチームに感謝している」アラフィリップ「悪いことは何もしていない」 cyclowired.jp
アラフィリップのコメント
どうやら許可されていない場所で補給を取ったようだ。審判の判断だからどうすることもできない。(悪いことは)全くしていない、全くしていないよ。
今日はとても長く、とても退屈なステージだった。そしてとてもナーバスな最後だった。ジャージを守るため集中しなければならなかったし、サム(ベネット)で勝とうと思っていた。彼がグリーンジャージを着ることになったのは良いニュースだ。
そういうことなら仕方ない。明日(マイヨジョーヌを)取り戻し、もうこの話はしない。
同上
アスリートの気持ちの切り替え方を目の当たりにするたびに、見習いたいと思うんですよね。

補給がゴール20km圏内にずれ込んでしまった理由は、スタッフ(アラフィリップの従兄弟)がボトルをソーシャルディスタンスに配慮しつつ安全に渡せる地点を探して歩いた結果うっかり、なのだそうです。チーム側も平謝り…。人同士の距離に敏感なこの時勢ならではの事件かもしれません。
(この後のステージの山では観客がすごい密になってるけど)
みんな疲れてる… でもがんばってる!
さあさあ、この後、中央山塊とピレネーが控える1週目後半、どうなるでしょうか。(今この文を書いてる時点で1週目全部見終わってますが)楽しみです!