末っ子が鯉のぼりが大好きで、6月も終わろうというのに折り紙で作り続けています。A田です。
6/23に閉幕したツール・ド・スイスまとめの後編です。
前編の記事はこちら「ツール・ド・スイス閉幕:前編―スプリンター前哨戦のゆくえは?」予習記事はこちら「ツール・ド・スイス予習―配信予定、コース、注目選手(ベルナルとアル多め)」
前回は割愛してしまいましたが、第4ステージで最有力優勝候補だったINEOSのゲラント・トーマスが落車。目の上を切る怪我を負い、リタイヤとなりました。骨折はなく、ツール・ド・フランスへの出場には問題ないということでした。
最強チームINEOSのエースは、ベルナルに引き継がれました。というわけで、さっそくいってみましょう。
ツール・ド・スイス結果一覧を再掲
前編にも載せましたが、全9ステージの結果一覧です。
日程 | Stg. | コース | 優勝 | 総合順位 |
6/15(土) | 1 | 個人T.T.9.5km | ローハン・デニス | 1.デニス 2.ボドナール 3.マシューズ +00:01 |
6/16(日) | 2 | 丘陵159.6km | ルイスレオン・サンチェス | 1.アスグリーン 2.サガン 3.デニス +00:01 |
6/17(月) | 3 | 平坦162.3km | ペテル・サガン | 1.サガン 2.アスグリーン +00:10 3.デニス +00:11 |
6/18(火) | 4 | 丘陵163.9km | エリア・ヴィヴィアーニ | 1.サガン 2.マシューズ +00:10 3.アスグリーン +00:15 |
6/19(水) | 5 | 丘陵177km | エリア・ヴィヴィアーニ | 1.サガン 2.マシューズ +00:14 3.アスグリーン +00:21 |
6/20(木) | 6 | 1級頂上ゴール 120.2km | アントワン・トールク (2位ベルナル) | 1.ベルナル 2.デニス +00:12 3.コンラッド +00:29 |
6/21(金) | 7 | 山岳216.6km 超級頂上ゴール | エガン・ベルナル | 1.ベルナル 2.デニス +00:41 3.コンラッド +01:13 |
6/22(土) | 8 | 個人T.T.19.2km | イヴ・ランパールト | 1.ベルナル 2.デニス +00:22 3.コンラッド +01:46 |
6/23(日) | 9 | 山岳144.4km | ヒュー・カーシー | 1.ベルナル 2.デニス +00:19 3.コンラッド +03:04 |
後半第6ステージからは山岳コースが始まるわけですが、スイスの山の風、本当に美しかったですね!↓こんな感じです。
6th.アントワン・トールクが単独逃げでワールドツアー初勝利
第6ステージは120.2km、獲得標高差1,900m、1級山岳の山頂フィニッシュ。本格的な山岳決戦の始まりです。
24名の逃げグループから、モビスターのルイス・マス、CCCのパトリック・ベヴィンとともに抜け出したユンボ・ヴィスマのアントワン・トールク。残り3kmで再びアタック、独走に持ち込みました。
約1分後方のメイン集団からは、INEOSのエガン・ベルナルがすごい勢いでアタック。追いすがるライバルや、トールクに置いていかれた逃げグループをパスしてトールクに迫ります。
が、17秒差でトールクが逃げ切り! 25歳になったばかりのオランダ人クライマーが、ワールドツアー初勝利!
「特別な気持ち。3年前に山岳賞ジャージを獲得したワールドツアーレースでプロ初勝利。この感情をうまく表現できない」
「チームの走りにも感謝している。一緒に逃げたベルトヤン(リンデマン)はとても力強い走りを見せてくれて、彼の牽引は逃げ切りに欠かせないものだった。最後は無線でベルナルが追いかけてきていることを知ったんだ。昨年のカリフォルニアで彼に負けたことがあるので、今回だけは追いつかれたくなかった」
cyclowired.jp「 1級山頂フィニッシュでトールク初勝利 猛追したベルナルが総合首位に浮上 」
トールクは、昨年2018年のジャパン・カップ2位(2人逃げの後、ゴール前スプリントでロブ・パワーに敗れる)になっています。親しみがわきます! ジロ・デ・イタリアはアシストでしたが(第15ステージではメカトラのログリッチェにバイクを差し出している)、スイスでは総合を狙う役を担っての出走だったようです。
そして、INEOSのエガン・ベルナルは総合首位に。ゲラント・トーマスに代わってのエースの責務をきっちり果たしたかたちです。
「強力なチームメイトたちがハイペースな展開に持ち込んで、そこから一発のアタックで飛び出した。最後は全開走行で、作戦通りイエロージャージを手にすることができたよ。3月のカタルーニャ以来のレース出場なので、この結果は自信につながる」
cyclowired.jp「 1級山頂フィニッシュでトールク初勝利 猛追したベルナルが総合首位に浮上 」
見ているほうも、「やっぱり、ベルナルすごいや…」と何か確信しましたよね。そして、やはり今年のツール・ド・フランスでも、INEOSが強いであろうということも。
7th.イネオスの若きエース、エガン・ベルナル貫禄の勝利
第7ステージは距離が長い1級山岳を越え、これまた長距離上る超級山岳の頂上でゴールする216.6km。
8名の逃げは、最後の超級山岳の途中で吸収。残り3kmを切ったところで、INEOSのベルナルがアタック。ライバルのエンリク・マスやローハン・デニスをぐんぐん引き離して、そのままゴール! 力を見せつけました。
ゴールでは「チームの勝利だよ」といわんばかりに、ジャージのチームロゴを指差していました。トルークには悪いけど、比べるとえらい貫禄ですよね(山頂ゴールで2位以下に追われている状況も同じだけど)。22歳ですよ。
「今日のステージ優勝をとても嬉しく思う。昨年のツール・ド・ロマンディの個人TTに続いて、スイスで勝利を飾ることができた。ライバルの強さを探るのは難しいけど、今日は調子が良かった。指示通りの素晴らしい走りをしてくれたチームメイトたちにこの勝利を捧げたい。彼らはあまりに強力で、付き切れしそうなほどだったよ」
cyclowired.jp「 超級山岳ゴッタルド決戦でイエロージャージを着るベルナルが貫禄のステージ優勝 」
コメントも完璧ですよね。
ベルナルについてはこちらにいっぱい書いたのでどうぞ(冒頭のリンクと同じです)「ツール・ド・スイス予習―配信予定、コース、注目選手(ベルナルとアル多め)」
8th.ベルギーの現ロードレース・チャンピオン、イヴ・ランパールトが勝利
平坦基調の19.1kmの個人タイムトライアル(T.T.)。当たり前ですが、ステージ・レースの後半に行われる個人T.T.は、序盤のT.T.とは違う過酷さがありますよね。ひとり一人走っている姿を見ているだけで、こみ上げてくるものがあったりします(情緒不安定なのか)。
ドゥクーニンク・クイックステップの勝利に大きく貢献している、ランパールトがの勝ちました! ベルギーの現ロードレースチャンピオン、2017年にはT.T.でベルギーチャンピオンになっています。今年28歳。春のクラシック、ドワルス・ドール・フラーンデレンでは2017、2018と連覇しています。
「絶好調とは言えない状態でスタートしたので、全開で走ったとは言え、この勝利は予想していなかった。世界チャンピオンを含めてこの種目のスペシャリストたちを打ち負かしたことは信じられない気持ちで、来週のベルギー選手権に向けた自信につながる。ワールドツアーレースでの個人TT初勝利。とても驚いているし、とてもハッピーだ」
cyclowired.jp「 19.2km個人TTでランパールト勝利 デニスの逆転を防いだベルナルが首位キープ 」
一方、総合勢は、首位のベルナルと、得意のT.T.で追い上げたい2位のローハン・デニスのタイムに注目が集まります。結果は、19秒差を詰められたものの、ベルナルが22秒差でリーダージャージを守りました。
9th.ヒュー・カーシーが単独で超級山岳を3つ越えて勝利!
101.5kmという短折距離のなかに、超級山岳3つ。その序盤、ひとつ目の山の登りで前に出たEFエデュケーションのヒュー・カーシー。そのままクイーン・ステージを走りきり、独走勝利をあげました!すごかったですね~。
「最初の登りで脚と身体、頭の状態の良さを感じたので、タイムトライアルを開始した。登りを1つ1つこなしていくのはみんな同じ条件。大丈夫だと信じて踏み続けた。2日前の山岳ステージでは心も脚も身体も疲れ切っていて、早くシーズン前半を終えて休暇に入りたいという一心だった。でも昨日の個人TTで調子の良さが戻ってきたので、ラストチャンスに挑んで最高の気分で休暇に入りたかったんだ」
cyclowired.jp「 カーシーがクイーンステージで鮮やかな独走勝利 ベルナルが総合優勝に輝く 」
ヒュー・カーシーはイギリス出身の24歳。ワールドツアーでは今回が初勝利でした。2014年19歳のときに、ツアー・オブ・ジャパンに出ているんですね。富士山ステージで2位(伊豆でも2位)になっていました。
余談:ジロ・デ・イタリアでも活躍したヒュー・カーシーの「意固地さ」
ciclissimoの最新号No.60は、今年のジロ・デ・イタリア特集ですが、総合11位、ヤングライダー3位、モンティローロ峠でニバリのアタックに反応するなど好走を見せたヒュー・カーシーもクローズ・アップされています。ヒュー・カーシーが所属していたコンチネンタルチーム、ラファ・コンドールJLTの元監督も当時の様子などを語っています。そのなかからひとつエピソードをご紹介します。ちょっと長いですが。。
「ヒューは、人の影響を受けやすいタイプではない。最終的には彼自身でつかんでいくしかない。でも、言われたことはきちんと頭の中に残っているようだ。何年も前のことだけど、レース中、甲殻類は食べないように指導したことがあった。リスクが高いからさ。そして4年後のジロで、彼からテキストメッセージが届いた。『これを食べるべきだろうか?』どうやらジロの夕食に、甲殻類が出たらしいんだ。食べるべきではない、と返事をしたら、彼はそのとおりにしていた。パスタは全部たいらげたけど、小エビには一切手を付けなかったんだ!」
ciclissimoNo.60「The Stori of Carthy」
小さなエピソードだけど、印象的でした。「意固地で我が道を行くタイプ(元監督談)」だけど、一度納得して受け入れたルールは厳格に守る。しかも、それを指導した本人に問い合わせるところが、頑固者っぽくていいですよね。
レースでも、自分がいけると思ったら、いく。ヒュー・カーシーを自由に走らせるチーム方針もあってのことですが、選手のパーソナリティが走りにあらわれるということは確実にあって、それがロードレースの面白さのひとつだと思っています。
だからこそ、こういう特集記事がたまらなく面白いんですよね。
ciclissimoNo.60:ジロ・デ・イタリア特集
総合優勝のベルナル、2位デニス、先頭交代しながらカーシーを追う
総合争いでは、5位のヤン・ヒルトのジャンプアップを狙うアスタナが序盤から積極的に動き、最後の超級山岳では総合勢の小グループのなか、INEOSはベルナルはひとり。ポッツォヴィーヴォというアシストを残すローハン・デニスに、反撃の余地ありか、と思いましたが、そこはさすが。ベルナルは単騎になっても崩れず、デニスのアタックに完璧に反応しました。
山頂からはベルナルとデニスのふたり旅。「デニスは『勝てなかったな』と思いながら下っているでしょうね」と解説の綾野真さんが言っていました。そのとおりでしょうね。しかし、積極的にふたりでまわり、ヒュー・カーシーに詰め寄りました。「最後まで勝ちにいく」「取れるものは取る」という貪欲さ、とてもいいと思います!
総合優勝はベルナル。ポイント賞はサガン(2位ヴィヴィアーニ)、山岳賞はヒュー・カーシー、ヤングライダー賞はベルナル(2位ティシュ・ベノート、3位エンリク・マス)でした。
長くなりました。
ツール・ド・フランス開幕まであと一週間。続々と各チームのメンバーリストが発表されていますね。
スイスからTDFにスライドする選手、ジロから連戦でここからゆっくり休めという選手。フランスの次はスペインのグラン・ツールもありますからね。
今年の夏も楽しみです!