GW10連休明け、疲労困憊のA田です。
こちらの記事「平成最後に5月のロードレース配信予定―そしてロードレースとの出会いを振り返ってみた」から早くも1週間・・・
令和初日からキャンプ(雨)、帰ってきてママ友飲みからの息子のサッカー試合引率2連発。飲みが余計だったとつくづく思うのですが、母たちは大型連休じゃないと弾けられないので・・・次は年末ですよ。
というわけで、すっかり休んでしまったロードレース観戦。目下キャッチアップ中です。
まずは、ツール・ド・ロマンディをDAZNで追いかけ配信しました。今回はツール・ド・ロマンディとはどんなレースか、また各ステージ結果、総合優勝のログリッチェについてまとめてみます。
スイスの西部(フランス側)、ロマンディ地方を走るツール・ド・ロマンディ
ツール・ド・ロマンディはスイス西部のフランス語圏地域、ロマンディ地方を走る5日間のステージ・レースです。ジュネーブでの個人タイムトライアル(I.T.T.)が初日や最終日に組み込まれるのが、通例のようです。今年は最終日。
ジュネーブって、ずいぶんフランス寄りにあるんですね。山岳だけでなく、スイスのレマン湖やヌシャテル湖など湖沼地帯の美しい風景も魅力のひとつとなっているようです。
ツール・ド・ロマンディの過去の優勝者
- 2012 ブラッドリー・ウィギンス(イギリス)
- 2013 クリス・フルーム(イギリス)
- 2014 クリス・フルーム(イギリス)
- 2015 ナイロ・キンタナ(コロンビア)
- 2017 リッチー・ポート(オーストラリア)
- 2018 プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア)
優勝者に錚々たる面子が並ぶのは、ツール・ド・ロマンディが山岳中心で総合系ライダー向けのレースだから。ジロ・デ・イタリアの前哨戦として、ツール・ド・フランス出場者の調整レースとして、オールラウンダーが集います。
そこに名前を連ねているのは、3年前のジロで彗星のごとく現れたプリモシュ・ログリッチェ。今年早くから、ジロ・デ・イタリアへの出場を表明しており、マリア・ローザ候補の筆頭になっています。
ツール・ド・ロマンディ2019、各ステージの結果一覧
さあ、プロローグと全5ステージの結果一覧で、ログリッチェの強さを確認しましょう。
Stg | コースなど | ステージ優勝 | 総合3位まで(タイム差) |
Pro. | I.T.T. | トラトニク | 1.トラトニク 2.ログリッチェ(+00:01) 3.ボーリ |
1 | 山岳 | ログリッチェ | 1.ログリッチェ 2.ルイ・コスタ(+00:10) 3.ゴデュ(+00:12) |
2 | 比較的 スプリンター向け | キュング | 1.ログリッチェ 2.ルイ・コスタ(+00:10) 3.ゴデュ(+00:12) |
3 | 丘陵 | ゴデュ | 1.ログリッチェ 2. ゴデュ(+00:06) 3. ルイ・コスタ(+00:08) |
4 | 山岳/queen | ログリッチェ | 1.ログリッチェ 2. ルイ・コスタ(+00:12) 3. ゴデュ(+00:16) |
5 | I.T.T. | ログリッチェ | 1.ログリッチェ 2.ルイ・コスタ(+00:49) 3.G.トーマス(+01:12) |
2日目の山岳ステージで勝ちリーダージャージを着た後、そのまま最終日までキープしての総合優勝でした。
「令和の男」ダヴィ・ゴデュのステージ勝利も要チェック
ルイ・コスタとともに僅差でログリッチェに迫っていたグルパマFDJの22歳の新星、ダヴィ・ゴデュの活躍にも注目です。第3ステージでは、ログリッチェやルイ・コスタを引きちぎる鮮やかなスプリントで、UCIワールドツアー初勝利をあげました。
ちなみに日本では 、プロローグの個人タイムトライアル(I.T.T.)の途中で、平成から令和へと時代をまたぎましたね。その瞬間、5月1日0時0分に画面に映っていたのは、ゴデュでした。
ゴデュはプロ入り3年目。フランスチーム、グルパマFDJを担う次期エース候補として期待されている、22歳のフランス人クライマーです。昨年の「ciclissimo」の選手名鑑の写真は、メガネ男子でした(豆情報)。「令和の男」として、日本でも人気が出そうです!
さて、それではここらへんで本題、ログリッチェの物語です。
22歳で自転車に転向、26歳でプロ入りした元スキージャンパー
ログリッチェは、スロベニア出身の29歳。スキージャンプが国民的競技である母国で、7歳から22歳までスキージャンプ選手でした。ジュニア時代には団体で世界チャンピオンになったことも。
ログリッチェが派手にクラッシュした動画は世界的に有名だとか・・・一応載せます。
体育学校で毎日スキーとそれを強化するあらゆるスポーツに取り組みました。(ただし持久系の運動はカリキュラムになかったそうで、自転車とはまだ出会いません。)「飛んでいるときの気分は最高」「旅が好きなので、スキージャンプで世界各国に行けたことがよかった」とログリッチェは当時を振り返ります。
しかし、20歳を過ぎて「競技を替えたい」という気持ちが出てきたそうです。
「ある時から、飛ぶことに対する気持ちが、萎えてきた。20歳になって、気がづいたんだ。僕は『いい選手』ではあるけれど、決して最高レベルに達することはできないんだ、って」
ciclissimo No.51 ジロ・デ・イタリア2016完全レポート―プリモシュ・ログリッチェ今年の新星
スキージャンプだけで生きていけるアスリートは、世界に30人程度だといいます。競技を替えることを決意したログリッチェは、2012年、22歳でスキージャンプ選手を引退します。
その後は清掃業などいくつかの職を掛け持ちしながら、リハビリで乗ったことのあった自転車にのめりこんでいきました。
2012年に初めてロードレースに参加。手応えを得て、あちこちの自転車クラブに「どうやったら自転車選手になれるか?」と質問しまくったそうです。そして、返事をくれたチームとトレーニングできることに。父に借金もしてアマチュア選手として活動を始め、2013年クロアチアでのレースがきっかけでアドリアモービルというロードレースチームから声がかかり、そこに2015年まで所属しました。
そして2016年からUCIプロチームである現ユンボ・ヴィスマに移籍し、プロ入り。転向から4年後のことでした。しかし、2016年当時、「自分が技術的に劣る選手である」と本人がはっきり述べています。
「今だって、まだ、プロトンの内でのポジション取りには問題を抱えている。だから毎レースが、勉強なんだ。自転車レースを始めた年は、よく落車したものだった。プロトンの中で悪戦苦闘して、いつだって全力で」
ciclissimo No.51 同上
「だから、タイムトライアルのほうが力を発揮しやすいのかも」とも。
そんなログリッチェですが、プロ入り初年のジロ・デ・イタリアで、鮮烈な印象を残すプロ初勝利をあげたのでした。が、その話はまた、別の機会に・・・
余談―異端なログリッチェに寛容なプロトン
余談になりますが、上のciclissimoのインタビューで、プロトン内で走ることに苦労していたログリッチェに対し、周りの選手は寛容だったというくだりが印象に残りました。
「プロの自転車選手たちは、僕のような人間に対しても、非常に寛容に接してくれるんだ。僕が技術的に劣る選手であることを、みんな理解している」
ciclissimo No.51 同上
一人ひとり、さまざまな個性の選手が集団で走る。ロードレースの不思議な魅力がここにあるんだな、と再確認できます。そして、こうした内容を明瞭に語れるログリッチェの率直さ、いいですよね。
テレマークで表彰台にあがるのだって、周囲の期待に応えてのことだと思うんです。自分がどう受け取られているか理解して、割り切っている潔さを感じます。
ジロ・デ・イタリアの総合優勝大本命のログリッチェ
2019年のログリッチェは、2月末のUAEツアー、3月のティレーノ~アドリアティコでも総合優勝。今回も優勝したことで「今年出場したレースすべて総合優勝」となっているそうです。え、ちょっと待って。ジロ・デ・イタリアで総合優勝したら、すごいことになるんじゃないでしょうか。
今年のティレーノ~アドリアティコの記事もどうぞ。表彰台事件の当事者はログリッチェでした。
UAEツアーの予習記事「UAEツアー2019:中東最大のレース!放送予定、歴代優勝者、見所など」
「ティレーノ〜アドリアティコからしばらくレースを離れていたけど、今こうして高地トレーニングの成果を感じることができる。少し予想外の走りでもある。とにかくジロに向けての準備は完璧に整ったよ」
cyclowired.jp「 最終個人TTで最速タイムを叩き出したログリッチェが貫禄の走りで大会連覇を達成 」
ティレーノ~アドリアティコの後は、高地トレーニングに取り組んでいたみたいですね。ジロの山、高いですもんね~(ひどい感想)。
今回のレースでも、ユンボ・ヴィスマのチームとしての貢献に感謝をささげていたログリッチェ。昨年はツール・ド・フランスの総合4位で涙をのみましたが、チーム待望のグラン・ツールの総合表彰台、しかも真ん中に輝くか!?
ジロ・デ・イタリアは今週末5月11日から。
楽しみです!