この週末、息子のサッカーの試合、イベントが雨の予報で中止になり、内心ほっとしているA田です。
ドーフィネのレースレポート、3回に分けてみました。
これまでの記事はこちら「クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2019結果①―ブルーリムジンになったアスタナ」「クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ結果②―ボアッソンハーゲンからアラフィリップまで」
そのあいだにも、スイスやスロベニア、オクシタニー(トゥールーズを首府とするフランスの地域圏名。2016年より公称。旧ラングドック=ルション、ミディ=ピレネー)ではどんどんレースが進んでいるわけですが…
今回は(私が)大感動の第7、8ステージです。プールスの勝利であふれてきた2015年ツール・ド・フランス(TDF)の思い出と一緒にお届けします。
※フルームびいきです。
こちらの記事もどうぞ「クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ予習―放送・配信予定、コース&イネオスの布陣」
7th.天候が大荒れで、久々の「映像来ない」ステージで中野さんのマッサー話
雷が鳴り、大雨が降ったこの日。第7ステージは全長133.5kmのなかに、1級山岳3つ、最後は超級山岳の頂上ゴール、獲得標高差4,400mという厳しいコース。
しかも、悪天候のため現地映像が来なくなった時間もけっこうありました。そうなると、 ゴール前の定点カメラの映像(もちろん選手は誰もいない)が延々と映し出されます。ロードレースあるあるですね。
ただ、この日は解説が中野善文さん、実況が永田実さんのゴールデンコンビ(勝手に私が言ってるだけ。でも、中野さんの話を一番じっくり聞ける組み合わせなんです)。なんと中野さん、アレクサンドル・ヴィノクロフが落車して大腿骨骨折の大怪我を負ったとき、現場にいたそうです。ワールドツアーの前線で働いてこられた、中野さんの経験の重みを感じますね。
執念のアタックでワウト・プールスが勝利!「フルームに贈る」
後半は天候もやや回復し、映像も戻りました。逃げを吸収した残り2km地点から、総合争いが始まります。アタックで飛び出したのは、アスタナのヤコブ・フルサングとボーラ・ハンスグローエのエマヌエル・ブッフマン。
アダム・イェーツやティボー・ピノーたちの追走グループが追いますが、その一番後ろから…
アタックして前に出て、そのまま先頭のふたりをかわし、INEOSのワウト・プールス(ポエルス)が勝利!
「チームに勝利をもたらすことができてよかった。この勝利はクリス(フルーム)への贈り物だ」
cyclowired.jp「強雨の超級山岳でプールス勝利 2位のフルサングが最終日を前に総合首位に立つ」
ワウト・プールスはオランダ、リンブルフ州出身の31歳クライマー。2016年にはリエージュ~バストーニュ~リエージュで優勝、昨年はパリ~ニースで2勝、今年はツアー・ダウンアンダーで総合3位。グラン・ツールでは重要な山岳アシストのひとりです。
プールス(ポエルス)とラルプデュエズ
プールスといえば、ツール・ド・フランスの“ダッチコーナー”でフルームを先導する背中を思い出すんです。“ダッチコーナー”とは、ラルプ・デュエズの第7番コーナーにオランダ人観客が集まって(最高潮に出来上がりつつ)コースを取り囲むエリア。ラルプ・デュエズは直近だと2018年と2015年に登場しているので、2015年のことでしょうかね。
2015年、フルームが2年ぶり2度目のTDF総合優勝した年ですが、フルームへのブーイング、嫌がらせが多くなっていました。観客に「ドーピング野郎!」とカップに入った尿をかけられる事件も起こりました。レース中にですよ。そんなこともあって、マイヨ・ジョーヌを着ての第20ステージのラルプ・デュエズ、「何も起こりませんように…」とハラハラドキドキだったんです。フルームの前を走るオランダ人のプールスが守り神のように見えました。
そもそも、ダッチコーナーがあるのはラルプ・デュエズのステージをオランダ人選手がたくさん勝っていたから(1983年までで8回中6回:wikipediaより)。オランダ人にとって、ラルプ・デュエズは特別な山のようです。
さらに2015年は、プールスがオメガファルマ・クイックステップからチームSkyに移籍してきた年でもありました。総合優勝を決めるべく、エースを先導してのラルプ・デュエズ。意気込んだプールスが飛ばして先に行ってしまい、もうひとりのアシスト、リッチー・ポートに止められるシーンもありました。
チームに、フルームに、力を与える勝利になったはず
思い出語りが長くなってしまいましたが、そんなわけで、プールスのゴールシーンでは泣きました。
フルームのドーフィネ優勝、ひいてはTDF優勝を目指していたアシスト陣、そしてチームにとって、フルームの事故がどれほどショックだったことか、想像できません。が、この勝利がどれほどチームを元気づけたか。それを考えると、私まで元気をもらえるような気がします。
8th.最終ステージとMVPを勝ち取ったディラン・ファンバーレ
最終ステージは、逃げにのっていたINEOSのディラン・ファンバーレがミッチェルトン・スコットのジャック・ヘイグとともに飛び出し、ふたりで山を越えて、ゴールスプリント。
「今日はジャンニ(モスコン)と自分が逃げに乗って、後から追いついてくるワウト(プールス)をアシストする予定だったけど、その展開にはならなかった。今週はチームにとってアップダウンの連続で、クリス(フルーム)のリタイア後もチームイネオスは戦い続けた。ドーフィネではこれまで苦しんでばかりだったけど、厳しいトレーニングのおかげで結果を残せるようになった。結果には満足しているよ 」
cyclowired.jp「ヘイグを下したファンバーレがイネオスに連勝をもたらす フルサングが2度目の総合優勝」
ファンバーレは、オランダの現タイムトライアルチャンピオンの27歳。この勝利が、初のワールドツアーでの勝利になりました。「TDFに出ることになるだろう」と上記のcyclowiredの記事にありました。
もし、フルーム健在でアシストに徹する展開だったら、 ファンバーレ、プールスの勝利はなかったでしょう。結果として、INEOSのチームとしての強さを見せつけることになりました。そして、それというのも、大変な状況下でチーム全員が前向きに走ったからこそ(もちろん、他チームの選手たちも、誰もがそのようなハートを持って走っているのですが)。
いやー。ロードって、本当にいいものですね(突然の水野晴郎)。
スイスでも活躍中のINEOS。
TDFも、楽しみです!